第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「なんだ! おめェら、やっぱり隠れていやがったのか」
ゾロはニヤリと笑うと、芝生の上に置いておいた刀を取った。
だが、人間の鎧を着たヒヒ達はゾロに目もくれず、森の奥へと走っていく。
「オイ! なんだってんだ?!」
何かいるのか?
自力で辿り着いた事はないが、確かこの森をずっと行った先に海がある。
海賊か何かが来たのだろうか。
すると、一匹のヒューマンドリルが威嚇するように、木々の向こうの暗闇に向かって牙を剥いた。
その瞬間。
───ゾクッ・・・
ゾロの背筋に冷たい悪寒が走る。
「・・・?!」
バサバサと響く、コウモリの羽音。
交戦体勢に入っている森の戦士ヒューマンドリルとは違い、蚊食鳥は“招かれざる客”から逃げようとしていた。
ゾロの心臓も先ほどからドクンドクンと強く脈打っている。
恐怖?
興奮?
分からない。
「いったい何が来る・・・?」
ヒューマンドリル以上の獰猛な動物か?
それとも・・・人間か?
“今宵は満月・・・剣を握る気分ではない”
ミホークの言葉が頭をよぎる。
満月っていうくらいだから、狼男でも出るのか。
森の奥から広がってくる何かの気配が、辺りの空気を重くしていく。
まるでここら一帯だけ重力が狂ってしまったようだ。
「これは・・・覇気・・・?」
だとしたら、なんてデタラメな覇気なんだ。
自分の行く手を阻もうとする者全ての意識を奪おうというのか。
まさかミホークはこれを感じ取って、城に籠っているのだろうか。
「来やがれ・・・鬼だろうと蛇だろうと、ぶった切ってやる」
ゾロが刀を咥え、身構えたその時だった。
ゴウッという音とともに、木々の間から覇王色の覇気がものすごい勢いで流れ込んでくる。
姿の見えぬ“侵入者”には分かったのかもしれない。
自分の行く先に、ヒューマンドリルや動物達とは格が違う強さの剣士がそこにいるということを───