第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「お前は・・・」
つるの後ろにいたのは、フード付きのマントを羽織った女性。
顔を覆っていても、影から見えるその目鼻立ちはかなり整っていることが分かる。
ドフラミンゴは眉間にシワを寄せると、サングラスで隠した目を天上に向けた。
「随分といい女のようだが・・・知らねェな」
「もっと、よく見るんだ。フードを取ってくれるかい?」
女性はつるに言われて顔を隠していたフードを取ったが、ドフラミンゴはそちらを見ようともしない。
見ずとも、それが“誰”であるかはもう分かっているようだった。
「ドフラミンゴ」
「・・・・・・・・・・・・」
天竜人の“世界で一番美しい女の奴隷が欲しい”という欲望によって生み出され、この10年間は国王の夜伽としてドレスローザに囚われていた女性。
「クレイオといったね。お前が知らないはずはないだろう、ドフラミンゴ」
「・・・その“女”のことなら知っている・・・だが、そいつはファミリーじゃねェ。おれの部下達もそう言うはずさ」
「ああ、お前の部下達は誰一人、クレイオを仲間だとは証言しなかった。グラディウスなんぞは、顔も見たことがないと言い張ったよ」
つるは腕組みをしながら、小さくため息を吐いた。
ドフラミンゴは凶悪犯罪者だ、本来ならば誰であろうと面会など言語道断。
それでも、海軍きっての冷静沈着さで知られる“大参謀”には、クレイオをここに連れてくるだけの理由があった。
しかしそれはドフラミンゴには関係のないこと。
「オイオイ、おつるさん。まさかその女もインぺルダウンへ連れて行くつもりか?」
「さァね・・・お前の出方次第と言っておこうか」
「・・・・・・・・・・・・」
ドフラミンゴは口を噤んだ。
つるの心中を探ろうとしているのか、それとも予期せぬ来訪者に戸惑っているのか。
両腕を繋いでいる鎖がガチャリと音をとたてた。