第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
リク家がドレスローザの王座復帰を宣言してから数日後。
海軍の船団がインぺルダウンへ向けて、荒れるグランドラインを渡っていた。
凶悪犯ドンキホーテ・ドフラミンゴを護送する船には、海軍大将と中将、さらにはかつて元帥だった男までが乗っている。
「・・・ドフラミンゴ、起きているかい?」
波が船腹を押すたびにギシギシと音を立てながら傾く、船底の牢。
明かりの届かない真っ暗なその中で、海楼石の鎖に両手足を繋がれた男が仰向けに“大の字”となっていた。
「何か用か、おつるさん」
手足だけでなく、胴体までも太い鎖で何重にも巻かれているのは、海軍が彼をそれだけ脅威と思っている証拠だろう。
囚人は口元に笑みを浮かべながら、檻の向こうにいる女海兵に目を向けた。
白髪で顔には深いシワがあるものの、背筋は一本の杭が通ったように真っ直ぐ。
体型も20歳の頃のままだろう海軍中将つるは、眉一つ動かさずにドフラミンゴを見下ろした。
「お前との面会を希望している者がいる」
「面会? カイドウの手下でも来たか、フッフッフッ」
麦わらとトラファルガー・ローによって“スマイル工場”が破壊され、自分も囚われの身となった今、四皇カイドウとのビジネスは失敗したも同じ。
彼がこのまま黙って引き下がるとは思えない。
ドフラミンゴを助けに来るか、それとも殺しに来るか。
そのいずれかだ。
「もしカイドウの手下なら、この軍艦に近づかせすらしないよ」
「・・・?」
ドレスローザを出航してから、少なくとも半日は過ぎた。
こんな海の上、カイドウのように自分に恨みを持っている人間でなければ、誰がわざわざ海軍の軍艦まで会いにこようというのか。
ドフラミンゴが視線をつるの背後へと動かした瞬間、それまでの笑みが消えた。