第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
一人残されたクレイオは空を見上げた。
上空高くに浮かぶ一点から、鋭い光を放ちながら傘状に広がっているドフラミンゴの糸。
それはまるで、クレイオを10年もの間、閉じ込めていた鳥カゴを視覚化しているようだった。
「・・・・・・・・・・・・」
ドフラミンゴはまだ生きている。
この糸が消えるか、それとも、国民全員を飲み込んで閉じきるか・・・
それを見届けるまでは、私はここにいなければいけない。
すると、ドフラミンゴの糸によって半壊したスピーカーから、コロシアムの実況ギャッツの声がノイズ混じりに聞こえてきた。
「コロシアムの生んだスター!!! ルーシーは蘇るっ!!!」
麦わらのルフィはまだドフラミンゴと闘っている。
戦況は分からないが、決着の時は近いのだろう。
「その瞬間まで───あと“10秒”!!!」
ギャッツの声とともに、麦わらの復活を願う国民全員がカウントダウンを始めた。
ルーシーならばドフラミンゴを倒してくれる、ただそれだけを信じて。
“5”・・・“4”・・・
「ルーシー!!」
「ルーシー!!」
“フフッ・・・お前が言っている“ルーシー”とは、モンキー・D・ルフィのことだ! あいつがそこにいるのも全ては作戦・・・おれの脅威になるわけがねェ!!”
ドフラミンゴ、貴方はそのルーシーに倒されようとしている。
こんなにも多くの人がそれを願っている。
「3秒前!!!」
もうスピーカーを通さなくても聞こえる。
秒読みをする人々の声が。
「“0”!!!」
しかし、無情にも鳥カゴはついに「王の台地」を切り刻むところまできていた。
ドフラミンゴの力が国民を皆殺しにするのが先か、それとも麦わらの勝利が先か。
誰もが“神”に祈り、天を仰いだその瞬間。
鳥カゴの頂点に、再び鬼神のごとく膨れ上がった麦わらが現れた。