第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「お気持ちだけ受け取っておきます・・・でも、私には他に行かなければならない所があるのです」
「え?」
迫りくる鳥カゴへの恐れを微塵も見せず、女性は堂々と背筋を伸ばしていた。
「私の夫はリク王に仕える兵士です。でもずっとその存在を忘れていたということは、彼もまたオモチャに変えられていたのでしょう」
クレイオの無事を見届けたから、今度こそ愛する夫を探しに行かなくては。
国中の人間が一カ所に集まっている今がチャンスだ。
「こんな大変な時に・・・どうして私なんかと一緒にいたの・・・?! 早く会いたいでしょう・・・!!」
すると女性は微笑んだ。
「夫は“兵士”。人間に戻れば真っ先に主君であるリク王の元へ駆けつけるのが、彼の務め」
兵士の妻だから分かる。
夫は今、リク王のそばで守っているはずだと。
「伝説の剣闘士キュロスが率いる、リク王軍所属の兵士の妻として・・・受けた恩を返さないようでは、夫に叱られてしまいます」
もしかしたら夫はもう死んでいるかもしれない。
生きていたとしても、二人ともドフラミンゴの力に屈するかもしれない。
でも、後悔はない。
夫と運命をともにできるのなら・・・
「何より、一人の人間として、ちっぽけなオモチャすらも気遣う、優しい女性を守ることができて良かった」
たとえ自分が傷つこうとも、平和を愛するドレスローザ。
戦争のないことを誇りとしてきたこの国の人々は皆、彼女のように優しく、強い心の持ち主なのだろう。
「さようなら、クレイオ様。どうか、生きることに負けないでください」
ドレスローザなら心配いりません。
ここで滅びようとも・・・
いつかまたきっと、どんなに日照りが続いても花が咲き誇る、美しい国として蘇る日がくるでしょう。
それだけの力を秘めた国です。
夫を探すため、再び狂乱の中へと走っていく女性。
その後ろ姿こそが、ドレスローザの芯の強さを象徴していた。