第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
すると、女性は届かないながらもクレイオに向かって、右手を伸ばした。
「貴方はこれまで、奴隷としてさぞ辛い目に遭ってきたことでしょう。そして、これからは“人間”として数々の苦しみを味わうかもしれません」
だけど・・・
「一つの愛は、数百の憎しみも、数千の悲しみも打ち消してくれます」
それはオモチャだった頃の女性が、クレイオに語った言葉。
「ドフラミンゴは私達、ドレスローザの人間にとって憎しみの対象でしかありません。だけど、貴方にとっては違う」
ドフラミンゴのクレイオへの愛。
たとえそれが普通の形ではなかったとしても・・・
彼女の憎しみや悲しみを打ち消し、人間として生きていくための支えとなるだろう。
「貴方もドフラミンゴを愛しているなら・・・彼の想いを無駄にしてはいけません」
どうか生きてください、世界で一番美しい元奴隷。
貴方はこれから自分の羽で空を飛び、自分の足で大地を歩んでいくのです。
「貴方はもう、自由なのだから」
彼女の言葉に、クレイオの両目からこれまでとは違う涙が溢れてくる。
それはとても温かく、希望のない冷たい心を溶かしていくようだった。
「ありがとう・・・」
貴方のおかげでドフラミンゴの愛に気づくことができた。
だからこそ・・・
私はやっぱり、このまま逃げることはできない。
「一人だけ助かるわけにはいかない。貴方も一緒に行きましょう」
さっきドフラミンゴが本当に私だけを切らないよう、故意的に鳥カゴを操作したのなら。
私がもう一度糸の間に身体を通せば、貴方も外に出られるはず。
クレイオが鳥カゴに近寄ろうとすると、女性は首を大きく横に振った。