第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「そんな・・・どうして・・・」
死ぬ覚悟・・・いや、死を望んでいたというのに、突然の自由にどうしていいか分からなくなる。
ドフラミンゴは、クレイオにとって自由が恐怖でしかないことをよく理解していた。
“金の稼ぎ方はおろか、1ベリーの価値も知らねェあの女が、外の世界に出たらどうなる? 翼をもがれた鳥の末路と同じだ”
奴隷としての生き方しか知らない自分に、どうやって人間として生きていけというのか。
むしろ、“野垂れ死ね”と言われているようなものだ。
それなのに・・・
「クレイオ様」
戸惑うクレイオに、女性は優しい声で語り掛けた。
「ドフラミンゴの寵愛は“本物”だったということです。覚えていますか、貴方と国王は結婚するものとばかり思っていたと、私が言った時のことを」
「え・・・?」
「貴方はドフラミンゴの寵愛を否定をしていましたが・・・」
“それは絶対にあり得ないわ。ドフラミンゴはそういう男じゃないし、そもそも私が結婚する価値のない女だから”
「今、こうして貴方だけが生きることを許されている・・・それが“答え”なのではないでしょうか」
長年かけて築き上げてきたものが崩れ、自身の命も危ないというのに、“切り札”の鳥カゴを一旦止めるという危険を冒してまでクレイオだけは生かそうとした。
「ドフラミンゴは貴方を愛しているんですよ」
その瞬間、クレイオの瞳から涙が溢れてくる。
「ドフラミンゴが・・・私を・・・」
だって・・・貴方は私にこう吐き捨てたじゃない。
“人間でもねェ、たかが奴隷の分際で”、と。
“自由になったところで、お前は一人で生きていくことすらできねェだろうが”、と。
「私はいったい、これからどうすればいいの・・・」
どうして私を自由にしたの、ドフラミンゴ。
私はそんなこと、望んでなどいなかった。
私の翼は、この空を飛ぶにはあまりに弱い。