第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ドスゥ・・ン!!
重い音が島中に響き渡る。
その時、誰の目にも信じられないことが起こっていた。
それはドフラミンゴの意志か、否か。
誰も止めることができないと思っていた鳥カゴが、何かにつかえているかのようにその動きを止めていた。
それだけではない。
両手を広げているクレイオの身体の幅だけ、数本の糸が消えていた。
まるで、小鳥を逃がすため鳥カゴの扉を開けているかのように。
「・・・え・・・?」
さらに、突然背後から吹きつけた冷たい風が、“さっさとここから出ろ”と言わんばかりにクレイオを外へと押し出す。
その直後、再び現れた糸によって扉は閉じられ、鳥カゴはゆっくりと動き出した。
───いったい・・・何が起こったの・・・?
クレイオの身体には一切の切り傷がなく、目の前には瓦礫の山と化した風景が広がっていた。
「クレイオ様・・・!」
振り返ると、元ブリキ人形の女性が唖然とした顔でこちらを見ている。
自分と彼女の間を遮る糸の格子を見て、ようやく気が付いた。
私は今・・・鳥カゴの“外”にいる・・・
「私・・・死んでいない・・・」
どうして私の身体は切り刻まれていないの?
周りにある建物は全て、切り刻まれてしまっているというのに・・・
鳥カゴはクレイオを無傷のまま置きざりにし、島の中心へ向かって縮小し続けている。
「クレイオ様、これがきっと・・・ドフラミンゴの“心”なのではないでしょうか!」
女性が糸に触れないギリギリの所で後ずさりをしながら叫んだ。
その声でようやく我に返る。
「ドフラミンゴは、貴方だけ殺さずに生かそうとした・・・」
女性は涙を流しながら微笑んでいた。
「貴方を鳥カゴの中から解き放った・・・」
“クレイオに自由? それは最も必要のねェものだ”
“一度自由を知っちまった鳥は、カゴの中に入れておくことができない”
「貴方は自由になったんです、クレイオ様」
灰色の雲に覆われた空の下、
瓦礫で埋め尽くされたこの大地の上で。
生まれて初めて手にする自由。