第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「クレイオ様、何を言っているんですか!!」
「私を助けてくれてありがとう」
貴方が私にしてくれた事に心から感謝している。
鳥カゴはもうそこまで来ている。
ドフラミンゴの精神状態か、それとも体力の限界が来ているのか、鳥カゴの収縮スピードはさらに増していた。
早く決着をつけたい、そういうことなのだろう。
どこかでは懸命に押し返して鳥カゴを止めようとしている人達もいるという。
揺るがないと思っていたドフラミンゴの優勢も今は見る影もなく、麦わらのルフィの勝利を信じる者の方が多い。
クレイオは人の流れを逆らうように鳥カゴの方へ歩いた。
「待って、クレイオ様!」
「ついてこないで、貴方まで危険な目に遭わせてしまう!!」
「そうはいきません! 私は最初から危険を覚悟で貴方を助けました! それなのに、ここで貴方が死んだら、全てが無駄になるでしょう!!」
「・・・・・・・・・・・・」
彼女の言うことはもっともだ。
一人で逃げられたはずなのに、今もこうしてクレイオと一緒にいる。
手に油を差してもらった、たったそれだけの恩を返すために・・・
するとクレイオは女性の方を振り返り、真っ直ぐと瞳を見つめた。
「私は生まれた時から奴隷だった・・・奴隷としての生き方しか知らないの」
「クレイオ様・・・」
「今まで一度も“ワガママ”を言ったことはない・・・言ったら、殺されると思っていたから。だけど・・・今ぐらいは言わせて欲しい」
迫りくる、鳥カゴの恐怖。
それは死へのカウントダウンだ。
「私はドフラミンゴが死んだら生きてはいけない・・・彼は私の全てなの」
それに・・・もう、疲れたのよ。
他人の所有物として生きていく、この人生に。
「死ぬなら、彼の力で死にたい。鳥カゴなら私の身体を細かく刻んでくれる」
“死ぬときは・・・血か肉か分からなくなるほど、この身体を粉々にしてもらいたい。天竜人の人形として作られたこの身体を”
死した後まで“美しい”とは言われたくない、だからなるべく無残な形でその時を迎えたい。
それはずっと心の底にあった、クレイオの願いだった。