第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「麦わらが勝ったァ!!」
人々は麦わらが勝利したと早合点し、拳を突き上げて喜んでいる。
しかし、空を見上げれば暗雲は晴れておらず、鳥カゴの柵も消えていなかった。
「ドフラミンゴは死んでいない・・・」
あの人が死んだら分かる・・・
だって彼の力はまだ、この“空”を壊さんばかりに広がっている。
すると、ドフラミンゴが磔にされている「ひまわり畑」が放射線状に亀裂が入り、バキバキと音をたてながら崩れていった。
「うわァ!!」
「ドフラミンゴはまだ生きてる!!!」
安堵から一転、パニックへ。
麦わらのルフィが中心街に居る以上、ドフラミンゴは必ずここに来る。
海賊達のケンカの場から離れたい人達と、鳥カゴから逃れてきた人達が中心街で交錯し、前も後ろも、右も左も分からない状態となった。
「クレイオ様!」
中心街に行くか、それとも離れるか。
いずれにしても、早く自分達もここから逃げなくてはいけない。
ブリキ人形だった女性に手を引っ張られたが、クレイオはもはや動けずにいた。
「ごめん・・・なさい・・・」
爆風と火事の熱風、そして逃げ惑う人々の土埃でまともに呼吸すらできない。
とにかく安全な場所を探さなければならないというのに、クレイオは静かに女性の手をどけていた。
「貴方だけ逃げて・・・」
「クレイオ様?! いったい何を・・・!!」
「私は・・・逃げてはいけない人間だから」
そう言って鳥カゴの方を見つめる。
その瞳は何かを覚悟したように穏やかだった。
「私はドフラミンゴの夜伽・・・だから、リク王の涙の訴えも私の心には響かない」
私の心は、貴方達、ドレスローザの国民達とは違う。
「10年前・・・私はドフラミンゴがした事をただ見ていただけだった・・・そして、貴方達を助けようともせず、ただのうのうと暮らしていた」
優しいブリキの召使人形さんなら、“それは違う”と言ってくれるだろう。
でも、事実は事実。
「ドンキホーテファミリーの人達が全滅し・・・それでも、ドレスローザが滅びる運命を変えられないのなら・・・」
クレイオは口元に笑みを浮かべた。
「ドレスローザの人達よりも先に死ぬべきなのは、この私よね」
それがケジメというものだろう。