第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
“浮いている”という言葉は、まさにぴったりな言葉だ。
一人の大きな男が風船のように膨らみ、身体は武装色の覇気で覆われている。
さらに、どのような脚力をしているのか想像もつかないが、宙を蹴りながら浮いていた。
「あ・・・あれはいったい誰でしょうか?!」
「わからない・・・」
遠目でよく見えないけれど、あれは本当に“人間”なのだろうか。
「分からないけれど、ドフラミンゴの敵であることは間違いなさそう」
そう思ったのはクレイオだけではなかったようだ。
町中のあちこちから、宙に浮かんでドフラミンゴを見下ろしている男に、“頑張れ”と声援が送られる。
しかし、彼とドフラミンゴの戦いの間にも鳥カゴは無情にも収縮を続けていた。
街が燃え、建物が崩壊し、人々の悲鳴が鳴りやまない。
島の端から逃げてきた者達で集まった中心街は、暴動さながらのパニックに包まれていた。
誰もが“これが悪夢であって欲しい”と願っているだろう。
ドフラミンゴに鉄槌を下そうとしている男も健闘してはいるが、悪魔を仕留めきるところまではいっていない。
「やはり無理なのか・・・!!」
誰かが諦めの言葉を漏らした、その時だった。
「私は・・・元ドレスローザ国王・・・!! リク・ドルド3世───」
備え付けのスピーカーから、忘れ去られていた男の声が聞こえてくる。
10年前にドフラミンゴによって失脚させられた元国王は、静かな口調でこの国で起こっていることを全て説明し始めた。
今、誰も逃げられない巨大な「鳥カゴ」の中にいること。
その「鳥カゴ」が街を切り刻みながら収縮を続けているということ。
そして・・・
「誰も敵わぬと思っていたドンキホーテファミリーは、この国に居合わせた屈強な戦士達の手によって今や壊滅寸前!!」
トレーボルやピーカ、ディアマンテを初めとした幹部達は全滅した。
「討つべき敵はもはや現ドレスローザ国王ドンキホーテ・ドフラミンゴを残すのみ!!!」
その事実は、この国の誰よりもクレイオに衝撃を与えた。