第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「それよりもクレイオ様、今すぐにここから逃げなければ」
「逃げる・・・?」
その時、ようやく気が付いた。
ここは民家の中のようだが、外から大勢の悲鳴が聞こえてくる。
「やめて、お父さん!!」
「お願いだ、おれから逃げてくれ!!!」
傷つけられる者達と、傷つけ“させられて”いる者達の悲痛な声。
これじゃ・・・まるで・・・
「ドフラミンゴです」
女性が外を睨みながら悔しそうに唇を噛んだ。
「10年前にこの国を乗っ取った時のように・・・ドフラミンゴは人々を操り、殺し合わせているんです」
操り人形のように人間を操作して、愛する者や友人を殺させていく。
それを防ぐには操作されている人間を殺すしかない。
いずれにしても罪の無い者同士で殺し合わせるという、ドフラミンゴのもっとも凶悪な技だ。
「それだけじゃありません。クレイオ様、空をご覧になってください」
「空・・・?」
肩を貸してもらいながら窓まで行き、上を見上げた瞬間、クレイオは我が目を疑わずにはいられなかった。
「あれは・・・いったい、なに?」
細い鉄線のような糸が並んでできた半球体が空を覆い隠している。
それはまるで、巨大な“鳥カゴ”のようだった。
「ドフラミンゴの能力・・・? あんなもの、見たことがない」
「さっき誰かが言っていたのですが、あれに触れると人間の身体が切れてしまうそうです」
「ドフラミンゴの“糸”なら・・・あり得る話ね」
それにしても、島全体を檻の中に閉じ込め、その中で国民同士を争わせるなんて・・・
これじゃ、“生きるか死ぬか”のコロシアムと同じではないか。
「なんて非情なことを・・・」
「ドフラミンゴはこの状況を“ゲーム”だと言っていました。ゲームを終わらせるには、最後の一人まで殺し合うか、それともドフラミンゴの命を奪うか・・・」
それともう一つ。
麦わら海賊団やリク王を初めとした12名の“受刑者”達を差し出すことができれば、この悪夢を終わらせることができる。
だが現状は、ドフラミンゴに操られている人間達から逃げ続ける事しか、クレイオ達にとって助かる道はなかった。