第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ボコォン!!
地面に大きな穴が開いたような衝撃がしたかと思うと、王宮全体が揺らぐ。
小刻みに揺れるのではなく、生き物のように不規則な動き方をしているから、これは地震ではない。
「ピーカ・・・?!」
クレイオは床に倒れ込みながら、近くにあった柱にしがみついた。
ドンキホーテファミリー最高幹部の一人であり、“イシイシの実”の能力者のピーカは、石と同化して自在に操ることができる。
おそらく今、彼の身体はこの大理石でできた王宮の一部となっているのだろう。
「ピーカがこの王宮で戦闘しているなんて・・・いったい何が起きているの・・・?」
トラファルガー・ローは海楼石の手錠で繋がれていたから、彼と同盟を組んでいる麦わらの海賊団の誰かが侵入してきたのか?
それともヴァイオレット?
ピーカの戦い方は、この城を破壊しかねない。
しかしクレイオには逃げる場所など無かった。
さらに開け放した窓の外から、大勢の人々の叫び声が風に乗って聞こえてくる。
「戻った・・・人間に戻ったァァァ!!!!」
「私の夫はどこ?! 私には夫がいたはず!! どうして忘れていたの?!」
狂喜する人々、失われていた記憶を取り戻して涙する人々。
それはドフラミンゴにとって最悪の事態が起こっていることを表していた。
シュガーの能力が解けて、オモチャに変えられていた人間達が元の姿を取り戻していく。
記憶が全て戻れば、誰がこの国の正当な王であるか皆気づくだろう。
「ドフラミンゴ出て来い!!! 殺してやる!!!」
「みんなダマされるな!! ドフラミンゴは悪魔だ!!!」
ドフラミンゴの悪事が明るみとなり、彼が長年かけて築き上げた地位が音を立てながら崩れていく。
「ドフラミンゴ・・・!!!」
クレイオが両手で頭を抱えながらドフラミンゴの名前を叫んだ、その瞬間。
ドレスローザを乗っ取った“悪魔”は、その信じられない力で王宮二階にある「スートの間」を境として、塔を上下真っ二つに斬った。