第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「言いたい事はそれだけか、クレイオ?」
ドフラミンゴの額には何本も血管が浮き上がっていた。
サングラスに隠れていても分かる。
彼は今、かつてないほどクレイオに対して怒りを覚えていた。
「人間でもねェ、たかが奴隷の分際で誰に向かって口を聞いている!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「フフッ・・・お前が言っている“ルーシー”とは、モンキー・D・ルフィのことだ! あいつがそこにいるのも全ては作戦・・・おれの脅威になるわけがねェ!!」
多少の誤算があっても、ドフラミンゴの優位は変わらない。
何より、首謀者であるローがこうして囚われの身となっているんだ。
ルフィもディアマンテに倒されるのは時間の問題。
「お前もヴァイオレットと同様・・・おれがローと麦わらの二人に敗れることを望んでいるのか?!」
「ヴァイオレットが・・・?!」
では・・・彼女はとうとう、10年来の目的を果たすため、賭けに出たというのか。
「おれが負ければ、お前は“自由”になる。だが、それでどうなる?」
クレイオの首筋に見えない糸が何重にも巻き付き、ギュウギュウと締め付け始めた。
「グッ・・・」
「自由になったところで、お前は一人で生きていくことすらできねェだろうが」
「わ・・・かっている・・・! だから、私は・・・」
貴方と一緒に滅びる覚悟よ。
だけどその言葉は、喉を潰さんばかりに締め付けるドフラミンゴの糸によって声になることはなかった。
「今、おれは忙しい。お前はさっさと部屋に戻って待っていろ」
「ドフラ・・・ミンゴ・・・・・・」
「逃げるんじゃねェぞ・・・あァ、悪かった・・・そもそも“逃げ方”も知らなかったな・・・フフフフ・・・」
酸欠に喘ぎながらクレイオが顔を上げると、笑っているはずのドフラミンゴの口は真一文字に閉じていた。
怒りだけではない、何かの感情が彼を支配しているようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
言葉を交わしたくても、ドフラミンゴの剣幕がそれを許さない。
結局、クレイオと“ドレスローザ国王”が会話をしたのは、それが最後となった。