第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「私はずっと貴方に会ってみたかったわ、トラファルガー・ロー」
「・・・ドフラミンゴの部下ならみんなそう言うだろうな」
するとクレイオは小さく微笑み、ローの胸元に視線を落とした。
「その刺青・・・ハート?」
「・・・・・・・・・・・・」
コラソン。
すなわち、“心臓”を取り囲むように胸に大きく描かれたハート。
そっと撫でると、冷たい鼓動を指の腹に感じた。
「とても綺麗な絵・・・さぞ名高い彫り師に彫ってもらったんでしょうね」
「───おれの刺青に触るんじゃねェ・・・」
クレイオ・・・いや、ドフラミンゴの関係者に刺青を触られたことにローが明らかな不快感を示した、その時だった。
「ここで何をしている、クレイオ!!」
一瞬にして広間に緊張が走る。
おそらく幹部達に何かを指示していたのだろう、ドフラミンゴが電伝虫を床に投げ捨てながらこちらに向かってくる。
「何故、コロシアムにいねェ?!」
「貴方が闘技場の前でローを撃ったというから王宮に戻ってきたのよ」
「おれがローをどうしようが、お前には関係のねェことだろうが」
「関係はないけれど、知りたかったのよ」
クレイオはドフラミンゴとローの間に立つと、真っ直ぐと国王を見据えた。
「貴方を倒すかもしれない男の顔を・・・」
七武海という肩書を持つドフラミンゴに、海軍は一切手を出すことができない。
また、四皇との太いパイプを持つ彼に盾突くほど無謀な海賊もいない。
狡猾にこの海を生きるドフラミンゴに真正面から挑むこの男なら、もしかしたらこの10年間、誰もできなかったことを成し遂げるかもしれない。