第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
クレイオが「スートの間」のドアを開けると、そこにドフラミンゴの姿は無かった。
特別に設置されたモニターには、決勝戦が始まろうとしているコロシアムが映っている。
『今大会の風雲児!!! 我らがァ!!! ルーシー登場ォ!!!』
熱い実況と声援とともに、“ルーシー”が片手を突き上げながら登場している。
そして部屋の中に入ってすぐ、ドアの横の柱に繋がれた老人がいることに気が付いた。
「リク王・・・!」
先ほどまで“リッキー”としてコロシアムで戦っていた老戦士。
それが先代国王であるということは、その顔を見れば明らかだ。
「ドフラミンゴは・・・?」
「・・・奴なら今しがた出ていった」
「そう・・・」
リク王がすんなりと答えたのは、クレイオが逃がしてくれることを期待したからではないだろう。
おそらく彼の心は今、決勝戦が映し出されているモニターに釘付けとなっている。
大事な孫娘、レベッカがそこにいるのだから・・・
そして部屋の中央に目を向けた、その時だった。
───ドクンッ・・・
心臓が大きく高鳴る。
『そのうちどこかからひょっこりと姿を現すさ・・・』
ずっと空席のままにしていた、「ハートの椅子」。
『その日が来るのが楽しみだ・・・フッフッフッ・・・』
ドフラミンゴはしばしば、その椅子を眺めては微笑んでいた。
『おれに似て、冷酷で狡猾だからな・・・』
出会った時から、自分自身を重ね合わせていた少年。
将来の自分の右腕として育てていたが、実の弟コラソンとともに姿を消した彼を、ずっと探していた。
「トラファルガー・ロー・・・」
そしてついにその少年が今、海楼石の手錠に繋がれ、「ハートの椅子」に座っている。