第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「世界政府の奴らも聞こえているだろ?」
世界政府直通の電伝虫が懐に入っているのはお見通しとばかりに、ドフラミンゴは天竜人を見て二ヤリと笑った。
「席は余っているはずだ・・・おれを七武海に入れさえすれば、ここにいる天竜人には手を出さねェと約束しよう」
天竜人の船に乗っている海兵達はすでにドンキホーテ海賊団の手に落ちている。
船底に穴が開いたこの船が沈むのも時間の問題だろう。
世界政府に許された考慮する時間は、あまりにも短かった。
『ドンキホーテ・ドフラミンゴ・・・』
天竜人の懐から聞こえてきた、しゃがれ声。
世界政府の最高権力の一人に違いない。
『貴様の要求は分かった。だが、まずは人質としている天竜人の安全を確認することが先だ』
それはもっともな話だろう。
世界政府や海軍本部から離れた場所で交わした約束が、きちんと守られるかどうかなど分からない。
ましてや相手は、天竜人を人質に取るようなイカれた海賊だ。
「分かった・・・ではこうしよう」
ドフラミンゴは天竜人の衣服の中にあった電伝虫を遠慮なしに奪うと、傍若無人な態度で相手に向かって条件を突き出した。
「1週間後に海軍本部にいく。それだけあれば、ここにいる天竜人の安否を確認する時間も、おれのために七武海の椅子を用意する時間も十分にあるだろう」
『・・・・・・・・・・・・』
「それと、一つだけ言っておこう。おれが持つ切り札は天竜人の命だけではない」
『なんだと・・・?』
「おれがかつて天竜人だったという事実・・・そして、マリージョア内部にある“国宝”の秘密を知っているという事実で、お前達はおれの要求を飲まざるを得ないはずだ」
その言葉に、相手の感情まで伝える電伝虫の表情が明らかに変わった。
「フフフフフ・・・!! それでは1週間後を楽しみにしている」
相手に交渉の余地を与えず、電伝虫を一方的に切ったドフラミンゴ。
もしかしたら、目の前にいる男は世界で最も凶悪な人間かもしれない。
クレイオは恐怖を感じる一方で、強く惹かれる自分を否定できずにいた。