第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
それから7年後。
15歳を迎える少女達は、息を飲むほどの美しさとなっていた。
長年かけて行われた厳しい審査に残ったのは、わずか5人。
彼女達は全員、どこから見ても“絶世の美女”と謳われる容姿をしていたが、どの瞳も人形のように生気を失っていた。
「お前達は今日から正式に奴隷となる。名誉なことだと思え。そして、15年もかけてお前らを創った天竜人様に感謝しろ」
裸で一列に並んでいる彼女達に向かって、従者は淡々と述べた。
“奴隷”となっても、やることは今までと変わらないだろう。
天竜人の性欲処理をし、時々着飾っては酒池肉林の宴を彩る華となる。
「No.217、前へ」
「はい」
クレイオは一歩前に出ると、従者の前で懺悔をするように膝をついた。
艶のある長い髪を片側に寄せ、完璧に均整の取れた真っ白な背中を向ける。
しかし、これから施される儀式に怯えているのか、僅かに震えていた。
「晴れて奴隷となったお前達に、世界一気高い方より名前を賜った───」
火鉢の中から取り出された、赤熱する焼きごて。
その先端には天竜人の紋章『天駆ける竜の蹄』が、悪魔のように燃えている。
それを背中に押された瞬間から少女は奴隷となり、一生を天竜人のために捧げなくてはならない。
「No.217、お前は今日からクレイオと名乗れ」
名前を貰ったと同時に、絶叫が部屋に響いた。
肉と肌が焦げる匂いが充満する。
「ああああ!!!!」
これまでどんな痛みにも、苦しみにも耐えてきた。
そのように躾けられてきた彼女が、ここまでの悲鳴を上げたのは過去に一度だけ。
それは初潮を迎えた直後に受けた不妊手術の時だった。
「クレイオ・・・」
先に烙印を押されたNo.56が、赤くただれた背中を丸めながら、愛する妹の苦しみが少しでも和らぐようにと手を差し伸べる。
「・・・・・・・・・・・・」
クレイオは自分の名前を最初に呼んでくれた人間がNo.56で良かった・・・と、口元に微かに笑みを浮かべた。
そして、差し伸べられた手に自分の手を重ねながら気を失う。
烙印がある限り、この世界の頂で生きていかなければならない。
途切れる意識の中、美しき奴隷の脳裏をよぎったのは、“地獄”とされている下界への憧れだった───