第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
コチ・・・コチ・・・と壁の時計の針音だけが響く。
しばらくして、ドフラミンゴの口元に柔らかい笑みが浮かんだ。
「・・・お前の言う通りだ、クレイオ」
数週間ぶりに城へ戻り、クレイオの所へ一番に行ってみれば、そこで目にしたのは部下の身体に触れている彼女の姿。
切ない想いを抱く娘のような手つきでグラディウスの胸に触れているのを見た瞬間、冷たい怒りが彼の感情を支配していた。
「オモチャはいくらでも替えがきくが、家族はそうもいかねェ」
だが、その“オモチャ”を撫でる手はとても優しく、壊れ物を扱うかのよう。
誰にも触れさせたくない、そう物語っているようにすら見える。
「悪かったな、グラディウス。冗談が過ぎた」
「い、いや、若が謝る必要はどこにもありません」
ようやく支配の糸が解け、グラディウスの全身には大量の汗が流れていた。
彼も“死”を感じていたのだろう。
ドフラミンゴのためなら命など惜しくはないが、ボスの役に立てない死はただの無駄死にと変わらない。
「クレイオは若だけの夜伽です。おれ達は決して手を出すことはないので、ご安心ください」
「いや、勘違いするな」
ドフラミンゴはクレイオを胸板に押し付けるようにして抱きながら、グラディウスを見つめた。
「お前らに手を出さねェよう、躾が必要なのはこいつだ。この女は“そのため”に生まれてきたようなものだからな」
生まれ持っての“性奴隷”。
彼女の毒に耐えることができるのは、天の血を引くおれだけだ。
“天夜叉”ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべながら、ドアを指さした。
「お前はもう行っていいぞ、グラディウス。おれとクレイオを二人きりにさせろ」
「はい」
緊張から解放されたグラディウスが部屋から出ていくのを見届けてから、ドフラミンゴはクレイオの洋服を破り捨てた。
その手には一切の慈悲が無い。
「───お前の所有者はこのおれ以外にいねェということを、もう一度叩き込んでやろう」
一糸纏わぬ姿にしたクレイオの背中には、天竜人の奴隷の証である烙印。
それを一撫でしてから、たわわな乳房に噛みついた。