第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「クレイオ様はそれだけ国王様の寵愛を受けていらっしゃるということでしょう」
「・・・“今は”ね」
歴代の国王達の肖像画が並ぶ、壮麗な大広間。
しかし、リク王朝の偉大な王達を嘲笑うかのように、一つ一つの絵にドフラミンゴのシンボルが落書きされている。
それだけ今はこの国において彼の力は強大だということ。
「でも、子どもはいつか必ず、オモチャに飽きる」
「クレイオ様・・・?」
「執着すればするほど、飽きる時はあっけないものよ」
世界政府から認められた海賊・王下七武海であり、ドレスローザの国王。
これ以上ないほどの肩書きを持ったドフラミンゴの妾になりたいという女性は、掃いて捨てるほどいる。
飽きられたら簡単に捨てられてしまうだろう。
「でも、国王様はあれほどクレイオ様を大切にしていらっしゃるから・・・いつかご結婚なさるものだと・・・」
「それは絶対にあり得ないわ。ドフラミンゴはそういう男じゃないし、そもそも私が結婚する価値のない女だから」
“玩具”として生まれ、奴隷の烙印を押された私を、いったい誰が妻に娶ろうというのか。
「クレイオ様・・・どうかそんな悲しいことを言わないでください。もし国王様の寵愛が“本物”ならば───」
体温がなく無機質なブリキの手が、クレイオの手に触れる。
「一つの愛は、数百の憎しみも、数千の悲しみも打ち消してくれます」
表情のないブリキ人形だが、きっと微笑んでいたに違いない。
その声はとても優しく、同時に深い悲しみが込められていた。
「・・・ありがとう」
触れた人間をオモチャに変える“ホビホビの実”を食べた、幹部のシュガー。
このブリキ人形がいったいどこの誰で、いつシュガーに触れられたのかは分からない。
彼女の能力のせいで、“本体”は人々の記憶から消えてしまっている。
でも、この小さな身体の中には確かに、人間の心が入っていた。