第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
一国の王という地位にありながら、ドフラミンゴはよく幹部を連れてドレスローザを何カ月間も留守にすることがあった。
外出の目的は、強奪など海賊らしい行為の時もあれば、四皇カイドウとの交渉、海軍からの召集の時もあった。
その時々によって、お伴をする顔ぶれは違っている。
だいたいはトレーボルなど最低一人の最高幹部と二人以上の幹部を連れていくが、気まぐれで伴の者を従えずに外出することもあった。
だが、ドフラミンゴは一度としてクレイオを連れて行こうとはしなかった。
否。
彼はクレイオをこのドレスローザに連れてきて以来、一度として国の外に出ることを許したことは無かった。
王宮から見渡す限りが、巨大な“鳥カゴ”。
その中に囲われる鳥には、一切の自由が無かった。
ドフラミンゴが理由を告げずに外出して2週間がたった、ある日。
クレイオはブリキの人形と一緒に、「肖像画の間」の床を掃除していた。
「クレイオ様・・・本当にありがとうございます」
隣で小さな身体を床に擦りつけるようにしながら磨いているのは、水仕事で手先が錆びてしまった、あの召使人形。
数週間前、もはや関節が動かなくなってスクラップ場に落とされそうになっていたところを、クレイオに油を差してもらっていた。
「私を助けてくださったばかりか、こうしてお手伝いまでしていただき・・・」
「気にしないで。私は他の人達と違って、このお城にいても何もすることがないの」
「クレイオ様・・・」
「私のことをずっと監視している人もいるから、下手なこともできないしね」
二人がいる「肖像画の間」の入り口では、先ほどからずっとグラディウスがこちらを睨んでいる。
ドフラミンゴ不在の間は、必ず幹部の一人がクレイオを見張ることになっていた。