第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
そもそも、ドフラミンゴと別れた時点で珀鉛病にかなり侵されていたというローが、悪魔の実を食べたからといって生き長らえているとも思えない。
「───いや・・・あのガキは生きてるさ」
しかし、ドフラミンゴは口の端を上げて二ヤリと笑った。
「おれに似て、冷酷で狡猾だからな・・・そう簡単に死ぬわけがねェ」
コラソンの死後、新たな“オペオペの実”はまだこの世に出てきていない。
それこそローが生きているという、何よりの証拠だ。
「そのうちどこかからひょっこりと姿を現すさ・・・」
その時は、空席のままにしてあるハートの椅子に座ってもらう。
「その日が来るのが楽しみだ・・・フッフッフッ・・・」
クレイオは顔を上げ、ドフラミンゴの肩越しに白い月を見上げた。
もし生きているなら、ローもこの世界のどこかで月の光を浴びているはず。
彼は幸せだろうか。
どこにいようとも、ドフラミンゴの見えない“糸”に絡め捕られているというのに。
いずれその糸に引き摺られるようにして、自らの意思であろうと、そうでなかろうと、ドフラミンゴの元にやってくるだろう。
「貴方がそれだけ執着しているローって子・・・私も会うのが楽しみだわ」
そう言うと、ドフラミンゴはクレイオの顎を掴んで自分の方を向かせた。
「そりゃいいが、くれぐれも惚れるんじゃねェぞ? お前はおれのものだ」
「・・・貴方の言葉が何であれ、私にできるのは頷くだけ」
そう、たとえ“お前は用済みだ”の一言ですらも。
ロー。
貴方はいったい、どのような形でドフラミンゴの前に姿を現すのでしょうね。
私やベビー5のように、ただの操り人形のまま現れるのか・・・
それとも、糸を断ち切って自由になった姿で現れるのか・・・
それまで私がこの世にいられたらいいのだけど───
「ん・・・」
クレイオはまだ見ぬ男の顔を想像し微笑みながら、ドフラミンゴの濃厚なキスを受け入れていた。