第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ドフラミンゴが再びベビー5に関わった人間を殺したのは、それから1週間後の深夜のことだった。
「ベビー5・・・!」
ぐったりとしているベビー5を抱えながら王宮に戻ってきたドフラミンゴは、まさに“夜叉”の形相をしていた。
頬に殺した相手の返り血が飛んでいたが、普段の彼ならば自分の身体が汚れるような殺し方はしない。
あまりの怒りに、ドフラミンゴ自ら手を下して惨殺したのだろう。
「クレイオ・・・ベビー5を介抱しろ」
ベビー5を受け取るために近づいただけで、ビリッと強い静電気のように感じる殺気。
彼の怒りがまだ収まっていない証拠だ。
「万が一、ベビー5が妊娠してたら堕胎させろ。その時はお前とヴァイオレットが支えてやるんだ」
「分かったわ・・・」
ベビー5が数人の男に輪姦されていると連絡が入ったのは30分前。
見知らぬ男に「頼む、ヤラせてくれ」と言われ、彼女はそれを自分を必要としていると勘違いしてしまったようだ。
処女だったというのに───
「ベビー5・・・可哀想に・・・つらかったでしょう?」
ファミリーの下っ端から“ベビー5さんが知らない奴らに連れていかれました”と報告を受け、ヴァイオレットの千里眼の能力で惨状を知ったドフラミンゴは、すぐに窓から飛び出していった。
その時の表情を思い出すだけで、今も背筋に冷たいものが走る。
「ベッドに横になれる? もしまだ出血しているようだったら医者を呼んでくるけれど」
「・・・・・・・・・・・・」
ベビー5はベッドに身体を預けながら、首を横に振った。
全身を武器に変えることができる彼女なら、男達を簡単に倒すことができたはず。
きっと・・・“君が必要だ”、“君しかいないんだ”などと言われながら犯されたに違いない。
「貴方を利用するなんて・・・許せない・・・」
「利用・・・? 私・・・やっぱり必要とされていたのね・・・」
ベビー5は力なく微笑んだ。
こんなことでも彼女の気持ちをラクにしてあげられるなら、嘘も方便なのかもしれない。
クレイオは込み上げる怒りを抑えながら、ベビー5の内腿にこびりついている血液をふき取った。