第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「・・・ドフラミンゴを許してあげて、ベビー5」
「クレイオ?」
「いつか貴方を本当に愛してくれる男に出会ったら、ドフラミンゴがなぜボーイフレンドを殺したのか、きっと分かるわ」
500万ベリーなどなくても、ただ一緒にいるだけで幸せになれる。
貴方の悲しい過去も全て抱きしめてくれる、そんな人ときっと出会えるはず。
ベビー5、貴方はとても優しく、心が綺麗な子だから。
「私を愛してくれる男・・・私を必要としてくれる人?! 出会えるかな」
「ええ、きっと出会える。利用するのではなく、必要としてくれる人にね」
「・・・?」
人に尽くすこと・・・それだけに生きがいを感じるベビー5にとって、利用されることも、必要とされることも、“喜び”に変わりない。
ドンキホーテファミリーは便利な彼女を利用しているだけ。
だけど、その筆頭であるドフラミンゴだけはどこか違っていた。
「でも、やっぱり愛にお金は必要なんでしょ?」
「どうして?」
「だって、若はいつもクレイオに宝石をプレゼントしているじゃない」
「あれは・・・」
確かにクレイオの部屋のクローゼットには、ドフラミンゴから贈られたアクセサリーで溢れている。
だけどそれは“愛”ではない。
「若はね、強奪した宝箱の中に綺麗な宝石を見つけると、これはクレイオにプレゼントしようって言って、嬉しそうに笑うんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「クレイオも若を愛しているから、プレゼントを受け取るんでしょ?」
その純粋な問いかけに、はっきりとした答えなどない。
ドフラミンゴがクレイオに与える宝石は、鳥カゴの中に繋ぎとめておくための、いわば鎖のようなもの。
“愛”というならば、ドフラミンゴがベビー5に向けているそれの方が、よっぽど優しい愛だ。
「・・・それも、いつかきっと分かるわ・・・」
ベビー5。
私は少しだけ貴方が羨ましい。
クレイオはベビー5から目を逸らすと、鼻の下まで泡風呂の中に身体を沈め、切なそうに瞳を揺らしていた。