第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
窓から見える夏の太陽はとても明るいのに、この部屋はどうしてこんなにも暗くて冷たいのだろう。
ここは愛と情熱の国。
道を歩けばそこら中で男女が愛を交わしている。
なのに、このベッドの上で交わすのは愛ではなく、ただの歪んだ欲望。
「貴方に言い寄る女の子など掃いて捨てるほどいるでしょう」
「ああ、だから掃いて捨ててきた」
クレイオの裸を満足そうに見下ろしながら、首筋から頬に指を這わすドフラミンゴは、それまで退屈していたとは思えないほど楽しそうだ。
国王が常にかけているサングラスに自分の顔が映っていることに気が付き、クレイオは眉をしかめながら目をそむけた。
「若い子の身体の方がハリがあっていいでしょ。どうしてこんな年増の身体を好むの?」
「青い果実もいいが、成熟した果実の方が甘い」
「成熟した果実は、ただ朽ちていくだけなのに?」
「成熟から腐敗に移り変わる、そのギリギリのところがたまらねェんじゃねェか」
形あるものが崩れていく様こそが美しい。
特にクレイオ、お前のような美しい女は特に。
「おれから解放されたければ、早く腐り堕ちることだな」
お前の果肉はまだ食べごろのまま。
その甘い蜜を含んだピンク色の花弁は、その芳香で男の欲望を誘う。
「・・・・・・・・・・・・」
果実をもぎ取るようにクレイオの胸を撫でていたドフラミンゴだったが、ふとその手が止まった。
「・・・お前、“首飾り”はどうした?」
首に何もつけていないのがお気に召さなかったのか、それまで笑っていた口が真一文字になる。
「いつもの引き出しの中にあるわ」
すると、ドフラミンゴはクレイオを残してベッドから降り、ウォークインクローゼットへ向かった。