第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ドンキホーテ・ファミリーの人間はグラディウスに限らず、とにかくボスに心酔している。
その中において、クレイオはとても異質な存在だろう。
ドフラミンゴを“ドフィ”と呼ぶのは、幹部の中でも特に古い者達が使う愛称。
それ以外は“若”か“若様”と呼ぶ。
クレイオはファミリーの幹部でないどころか、ドフラミンゴに忠誠を誓ってすらいない。
彼女がこの城に住むことを許され、国王から寵愛を受けている理由は、たった一つ。
「フッフッフッ・・・グラディウスに絞られたか?」
閉めたはずの鍵が外れていたドアを開けると、部屋の正面にある出窓にその男が座っていた。
「ドフラミンゴ・・・」
ここはクレイオの自室。
シャツのボタンを外して胸を肌蹴させているドフラミンゴは、勝手知ったる様子で堂々とワインを飲んでいる。
「・・・プールで涼んでいたんじゃないの?」
「ああ、お前がいねェもんで、呼びに来てやった」
「10代や20代前半の女の子達と一緒に水着になれとでもいうの? そんなに若くはない」
「お前が肌を見せたくねェのは、年齢が理由じゃねェだろうが」
ドフラミンゴは薄っすらと笑いながら出窓から降りると、がに股の長い脚でよたよたとクレイオに向かって歩いてくる。
そして、両肩が出るほど襟が大きく開いたドレスを下にずり下ろした。
「まだ昼間だけど」
「だからどうした?」
長い舌で舌なめずりしながら、露わになった乳房を指の先で弾く。
「お前は、おれの退屈を慰めるためにここにいるんだろ」
それ以外に存在価値などない。
冷酷に笑いながらドレスを破り取り、下着だけになったクレイオをベッドに押し倒す。
そこはまだ、今朝の情事のなごりが残っていた。
シワだらけのシーツに飛び散る、乾いたドフラミンゴの精液。
ここがクレイオの生きる世界。
彼女がこの城に住むことを許され、国王から寵愛を受けている理由は、たった一つ。
クレイオは国王の夜伽だった。