第6章 真珠を量る女(ロー)
最後の熱を放出した後、ローは息も絶え絶えになりながらクレイオを抱きしめた。
「・・・一つ、頼みがある」
クレイオは遠のきそうな意識を必死に繋ぎ止めながら、ローを見上げる。
「───おれの胸に刺青を彫って欲しい」
抱きたいと思う女がクレイオだけのように。
この身体に墨を入れて欲しいと願うのもまた、クレイオだけ。
「おれに心をくれたコラさんのトレードマークは、“ハート”だった。おれにはコラさんほどの優しさも心もねェが・・・」
クレイオの右手を取り、甲にキスをする。
「お前の手で彫ってもらえたら・・・きっとおれの“ハート”も、あの人に誇れるものになるような気がする」
これほど愛しいと思う女に彫ってもらうんだ。
きっとコラさんはこう言うだろうな。
“なんだ、ロー! お前もようやく一人前の男になったな!!”
「絵柄はお前に任せる・・・好きな絵を彫ってくれ」
背中に彫ったタトゥーは、大好きだった人の“本懐”を遂げる覚悟の証。
これから胸に彫るタトゥーは・・・
「何があっても二度と心は失わないという、覚悟の証───」
コラさんからもらった、心。
そして、クレイオへの愛情をしまってある、この心を。
一生消えることのない刺青。
それは、ローのクレイオに対する愛がそれと同じだけの長さであることの証だった。
「・・・・・・・・・・・・」
クレイオはローの胸を静かに見つめていた。
その瞳にはすでに、墨絵のイメージが映っているのだろうか。
どれだけそうしていただろう。
ふと顔を上げると、ローの目を真っ直ぐと見て微笑む。
「いいわ・・・貴方の誓い、その身体に彫ってあげる」
ロー。
たとえ海賊だろうと、私は貴方に愛されて幸せ。
「6代目ホリヨシ、貴方の御覚悟を彫らせていただきます」
そして、私の覚悟も貴方の身体に彫らせていただきます。
貴方を命ある限り愛する、と───