第6章 真珠を量る女(ロー)
最初は互いの体温を分け合うような触れるだけのキスだったが、次第にその深さを増していく。
気付けば、相手を求める気持ちがそのまま表れた濃厚なキスとなっていた。
歯がぶつかる衝撃すら二人を高ぶらせていく。
「ん・・・ロー・・・ッ・・・!」
呼吸をする間すらも惜しいとばかりに欲求をぶつけてくるロー。
普段は冷静な彼とはまるで別人だ。
それだけずっと感情を押さえつけてきたのだろう。
「クレイオッ・・・」
ローの手が、衣服越しにクレイオの乳房に触れた。
いつの間にか着替えさせられていた服には、ハートの海賊団のシンボルが刺繍されている。
「・・・お前は言っていたな・・・最後の日くらい彫り師のままで終わらせて欲しいと・・・」
関係を持った数多くの女の一人としてでなく、彫り師としてローと別れたい、と。
「確かにお前の他にも抱いた女はいる・・・だが、愛しいと思ったのは・・・抱きてェと心から思ったのは、お前が初めてだ」
帽子と同じ柄の布団が敷いてあるシングルベッドに押し倒そうとする力、どうして抗えよう。
「たとえお前に触れられるのがこれで最後だろうと・・・いや、最後ならなおさら、お前を抱かねェまま島を出ることはできねェ」
初めて身体を重ねた日は、オペオペの実の能力を使って脅した。
だが、今のローは切ない目をクレイオに向けるだけで、その手もどこか震えている。
「ロー」
舌を受け入れながら、クレイオは涙を浮かべた瞳でローを見上げた。
「つらかったでしょう・・・今だけは、自分をラクにしてあげて・・・」
シャボンディ諸島を出発したら、貴方は海賊としてさらに非情にならざるを得ないだろう。
いずれ若様ともぶつかるだろう。
いつか深く傷つくことになるというのなら・・・
「せめて、今だけは私の中で貴方の全てを開放してあげて・・・」
痛みも、悲しみも、つらさも。
そして、愛情も。
貴方は不器用な人だから───