第6章 真珠を量る女(ロー)
「クレイオ・・・」
おい、教えろ。
この感情を言葉でどうやって表せばいいというのか。
狂おしいほど彼女を求め、このまま部屋に閉じ込めておきたいとすら思う。
それはつまり・・・
「クレイオ・・・・・・」
これまで一度も口にすることができないでいた言葉。
大好きだった人が遺してくれた最期の言葉。
「───愛している・・・」
それはとても弱々しく、しかし優しい声だった。
「クレイオ、お前を愛している・・・・・・」
悲劇を目の当たりにして心を失った少年に、コラソンはその優しさで新たな心を与えた。
だがその心も復讐心こそ溢れていたものの、愛で満たされることはなかった。
“おいロー、愛してるぜ!!”
だが、コラソンが本当に残したかったのは、復讐心ではない。
彼の最期の言葉こそが、少年の心を埋め尽くして欲しいと願っていた感情ではないか。
そして少年は今、コラソンが願った感情を抱くことのできる女性に出会った。
「愛している・・・」
何度も噛みしめるように繰り返すローに、クレイオの目から涙が零れる。
この言葉を口にするまでに、彼がどれだけ苦しんだのか。
その表情を見れば痛いほど分かった。
「ロー・・・」
貴方の腕、とても温かい。
“死の外科医”と呼ばれている貴方だけれど、こんなにも温かい心を持っている。
涙に濡れたクレイオの唇が開いた。
「私も愛している」
コラさんという人は、愛で貴方を救った。
ならば私は、愛で貴方を包み込もう。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
どちらからともなく寄せ合う唇。
そして、二人の心とともに、ゆっくりと重なり合った。