第6章 真珠を量る女(ロー)
「コラさんが命がけで“オペオペの実”を手に入れてくれたから、おれは今もこうして生きていられる」
違うな・・・
そのずっと前から、自分はあの人に守られていた。
「破壊だけを望む狂ったガキに背中を刺されても、コラさんはそんなおれの為に泣いてくれた」
とても優しい人だった。
たとえ蘇らせることができたとしても、ドフラミンゴがいる世界に呼び戻すわけにはいかない。
「───クレイオ・・・おれは自分が分からねェ・・・・・・」
ローの手がクレイオの後頭部に触れ、そのまま胸に抱き寄せられる。
「おれは・・・つら゛い・・・」
それは故郷を失ったローが、初めてコラソン以外の人間の前で“弱さ”を見せた瞬間だった。
「お前が海に落ちた時に思ったのは、もう二度と・・・大切な奴を目の前で殺されたくねェということだった・・・」
コラソンがドフラミンゴに撃たれた時、宝箱の中で何もすることができなかった。
「コラさんが殺されて11年・・・当然、死んだという事実は受け入れている。何より、“形見”としてあの人の命をもらったからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だが・・・お前は違う・・・!!」
クレイオを抱きしめるローの腕に力が入った。
まるで、恐怖に怯えてしがみついてくる子供のようだ。
「おれの中に、お前のものは何一つねェ・・・もし・・・お前が死んだらおれは・・・神に背こうとも、お前を蘇らせようとするだろう」
かつて、珀鉛病から生き延びるため、死という運命を変えたように───
なんとしてでも、クレイオを死者の国から呼び戻そうとするだろう。
「こんなにもお前を想っているが・・・同時に、お前の背後にいるドフラミンゴを許すことはできねェ」
「ロー・・・」
「結局おれは・・・体中に手榴弾を巻き付けていたガキの頃と何一つ変わらねェんだ・・・でも、この心はコラさんからもらったもの・・・絶対に壊すわけにはいかない」
だから、つらい・・・
ドフラミンゴへの恨みを抱えながら、クレイオを想うのは・・・
人格が壊れ、ただ目に映るもの全てを壊したいと思っていたあの頃に戻ることができれば、どれだけラクだろう。