第6章 真珠を量る女(ロー)
「この部屋にはあまり他人を入れねェんだが・・・お前は特別だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「実の父親の皮膚を額縁に入れて飾るような女だからな」
クレイオが押し黙ると、ローは“冗談だ”と小さく呟いた。
この部屋は自分の一部。
彼女にそれを見せるということは、ローの中の一番脆い部分を曝け出すのと一緒だった。
「・・・とても悪趣味なコレクションのようだけど・・・いったい何の研究をしているの・・・?」
「知りてェか?」
ローは薄く笑うと、人間の指らしきものが入った瓶を揺らした。
「死んだ人間を蘇らせる方法───」
それはとても正気とは思えない言葉だった。
死者を復活させるなど、神にしか許されない行為だ。
いや・・・それとも、彼が持つ“オペオペの実”は、人間の命を左右する力すらもあるというのか・・・?
「そこまでして生き返らせたい人がいるの・・・?」
「その人を殺したのがドフラミンゴだと言ったら、お前はどうする?」
「・・・・・・・・・・・・」
「死者蘇生のためには、若い女の組織が必要なんだ。ここにはそれが足りない」
それがクレイオを部屋に招いた理由?
思わず後ずさりをすると、ローはクスクスと笑った。
「クックック・・・冗談だ。ここにある標本達は、遺伝子疾患を治す方法を探すための材料にすぎない」
たとえば“珀鉛病”のような、遺伝子の異常が原因の病気にかかった患者を救いたい。
だが、先ほどからクレイオが気味悪そうに見ている心臓は、彼女を海に突き落とした5000万ベリーの賞金首のもの。
あとでじっくりなぶってやろうと、そこに置いてあるだけだ。
「・・・冗談を言うために、私をここにつれてきたの?」
「悪かった。冗談にもならねェな・・・どんなに技術があっても、コラさんはもう生き返ることはねェ」
「コラさん・・・? それが、ローの恩人の名前・・・?」
「ああ・・・コードネームだが、おれはそう呼んでいた」
いや・・・2年半ほど一緒にいたけど、そう呼んでいたのはごく短い期間だった。
“お前今、「コラさん」て・・・”
初めてそう呼んだ時、とても嬉しそうにしていたっけ。