第6章 真珠を量る女(ロー)
“約束したから・・・貴方がもし海の魔物に襲われたら、私は津波よりも早く駆け付けて貴方を助けるって───”
“貴方の命はとても懐かしくて・・・愛おしい・・・”
あの言葉の意味は、いったい何だったんだろうか。
ローがクレイオの知り合いだから、というだけでは説明がつかない。
「彼女はシャチ君達に何か言っていた? 今、どこに住んでいるとか・・・会いたいなァ・・・」
「残念ながら、人魚さんはクレイオさんとキャプテンを岸に上げたら、そのまま海の中へ消えていっちゃったよ。おれ達もキャプテンを助けてくれたお礼をしたかったのに」
「そう・・・」
魚人類はそもそも、人間を恐れている。
天竜人の奴隷だった過去を持つ彼女だけど、人間のフリをしてまでこのシャボンディ諸島にいる。
そう簡単に心を許すわけが無かった。
「とにかく・・・元気そうで良かった・・・・・・」
父にヒマワリの絵を彫ってもらって嬉しそうに微笑む彼女の姿を、昨日のことのように思い出せる。
“ありがとう、ホリヨシ・・・貴方は私に自由をくれた”
空を見つめて咲き誇るヒマワリは、別名『太陽の花』。
太陽は、深海にある魚人島にとっては希望の光だ。
その花で天竜人の紋章を潰した人魚は、いっそう美しく見えた。
「それにしても、人魚が地上を歩けるとは知らなかった」
「人魚は30歳を過ぎると尾ヒレが二股に分かれて、地上で暮らせるようになるのよ」
「へえ~! 神秘的な種族だなァ」
「貴方達もこれから魚人島へ行くんでしょ? すぐに分かると思う」
すると、クルー達はちょっと困ったようにローを見た。
シャチ達は当然、すぐに“新世界”を目指すものと思っていたが、船長にはその意思がないようだ。
“時期を待つと・・・そう言ったんだ。慌てるな、“ひとつなぎの大秘宝”は逃げやしねェ・・・”
しかし、その真意はまだ、誰にも分からないまま。