第6章 真珠を量る女(ロー)
ローが自分を助けるために海へ飛び込んだ?
悪魔の実の能力者は、海に入ると全身の力が抜けて泳げないはず。
それはただの自殺行為だ。
さっき言っていた、“マヌケを晒す”とはそのことなのか。
「チッ・・・勘違いするな。お前を助けたのはおれじゃねェ」
「え・・・じゃあ、誰が・・・?」
ローは質問に答えず、押し黙った。
もしかしたら彼自身もまだ、海の中で見た光景を信じられずにいるのかもしれない。
すると、代わりにシャチを口を開いた。
「それがさ、おれらもびっくりだったよ!」
「なに、シャチ君」
「クレイオさんが海に突き落とされて、キャプテンも飛び込んでいったあと、おれらはどうしていいか分からなくて立ちすくんでいたんだ」
“キャプテン!!!”
残った船員の中で一番泳ぎが得意な者が助けにいくか・・・?
それとも潜水艦で探しに行くか・・・?
いや、ダメだ!
それでは二次被害が起こるだけだし、この海流ではレーダーも正確に作動はしない。
そもそも、どうやって水中でローを船内に引き入れるんだ。
諦めるしかないのか・・・?
絶望が仲間達の脳裏をよぎった、その瞬間。
“大丈夫、私に任せて”
「突然、おれ達の前に髪の長い綺麗なお姉さんが現れた」
「お姉さん?」
「いや~、とびっきりの美人で、いい匂いがしたなァ~」
「シャチ君! それはいいから、続きは?」
ローは腕を組みながら黙っていた。
おそらく彼もその“お姉さん”を見たのだろう。
「アー、ごめんごめん。そしたらその人、着ていた洋服をいきなり脱ぎ始めたんだ」
ブラウスと、足首まで隠していたロングスカートを脱ぎ捨てた女性。
唖然としながら彼女を見ていたシャチ達は、さらに驚くべきことに気が付いた。
「それまで普通に地面を歩いていたその人には、足が無かった。その代わりに、二股に分かれた尾ヒレがあった」
彼女は暴風に髪をなびかせながらハートの海賊団を振り返ると、ニコリと微笑んだ。
“二人は必ず助けるわ”
そう言って、荒れ狂う海の中へ飛び込んでいった。