第6章 真珠を量る女(ロー)
「運が良かったな。あれだけ荒れ狂った海に落ちておきながら、目立った外傷はほとんどない。軽く低体温症になっていたが、意識障害もねェようだからもう大丈夫だろう」
「・・・・・・・・・」
そう・・・確かに自分は溺れたはず。
覚えているのは、海賊に海へ突き落されたところまで。
ものすごい水圧にどうすることもできず、ただ沈んでいくしかないと思っていたのに・・・
「貴方が助けてくれたの・・・?」
「・・・いや、おれはただマヌケを晒しただけだ」
「・・・?」
ローの言葉の意味が分からずにいると、べポとシャチ、ペンギンが勢いよく部屋に入ってきた。
べポの手には、温かいミルクティー。
「クレイオ、甘い紅茶を持ってきた! 身体があったまるよ!」
「あ、ありがとう」
べポからカップを受け取っているクレイオを一瞥し、ローはベッドから少し離れた所にある黄色い二人掛けソファーにドカリと座った。
その様子を見たペンギンが、心配そうな目を船長に向ける。
「キャプテンはもう休んでください。あんたも気を失っていたんだから」
「あ? おれのことはいい」
だが、ローの目の下のクマはいつもより色濃く、心なしか顔色も悪い。
「クレイオさんが目を覚ましたんだから、もう無理しなくていいでしょ。横になって点滴を打ってください」
「・・・うるせェぞ、ペンギン」
ギロリとペンギンを睨むローだったが、その声に覇気がない。
疲労が限界に達しているのは明らかだった。
「気を失っていたって・・・どういうこと?」
「キャプテンも海に飛び込んだんだよ。クレイオを追っかけて」
「べポ!!」
“余計なことを言うな”とローがべポを睨んだ時はすでに遅し。
誤魔化しようのない空気が治療室を包み込んでいた。