第6章 真珠を量る女(ロー)
なるほど、クレイオの言う近道というのは確かに、地元の人間しか知らない道だった。
というより・・・
「お邪魔します!!」
他人の家の垣根を越え、敷地の中を走りながら海を目指す。
「・・・オイ・・・これは、不法侵入なんじゃねェのか?」
「だから、“お邪魔します”と言っているでしょ!」
クレイオは、“海賊のクセに小さなことを気にしないでよ”と眉間にシワを寄せたが、ローは“どう考えても問題だろ”と顔をしかめる。
「そんな顔しないでよ。ほら、もう見えてきた!」
悪天候のせいで視界が悪かったが、確かに前方に海らしきものが見えてきた。
さらに、濃霧とは違う煙が昇っているのが見え、クレイオの後ろを走っていたローが一気にその速度を上げる。
「ロー?!」
いくら長身で脚が長いとはいえ、それは常人を超えた速さだった。
クレイオの横を一瞬で追い抜き、船まで一足飛びに飛ぶ。
「キャプテン!!」
ローを追いかけるべポもまた、ムササビのように濡れた大木の間を飛び移り、気づけば二人は遥か前方に行ってしまっていた。
「・・・すごい・・・」
あれが、2億ベリーの賞金首なのか・・・
ケタ違いの身体能力に、開いた口がふさがらない。
「ハァッ・・・ハァッ・・・・・・」
二人から遅れること、数分。
ぬかるんだ土に足をとられながらクレイオもようやく堤防までやってくると、右の方で青い球体が光っているのが見えた。
「あれは・・・ローの能力・・・」
半径10メートルほどの球の中では、何人もの海賊が身体をバラバラに刻まれ、洗濯機のようにグルグルと回っている。
ローの船らしき潜水艦は、岸壁に取り付けられた鉄の係船柱に繋がっていた。
高波で大きく揺れてはいるが、目立った外傷はなさそうだ。
しかし、べポ達と同じツナギを来た海賊が数名、ケガを負っているのか甲板で蹲っていた。
「さて・・・この嵐だ、どこまで流されるかな?」
仲間がやられた報復として敵を沖の方へ飛ばそうと、ローが人差し指を空に向かって立てた、その時。
「・・・!!」
何者かがクレイオの身体を後ろから羽交い絞めにした。