第6章 真珠を量る女(ロー)
「べポ・・・?」
突然の航海士の乱入に、ローは驚きながらそちらを振り返った。
眉間にシワを寄せているものの、どこか安心したように小さく息をついている。
鞘から数センチほど抜かれたところで止まっている『鬼哭』。
少なくとも、今は刀を抜く必要が無くなったからか。
「キャプテン、大変だよ!! さっきクレイオの店にいた海賊達が、おれ達の船を荒らしているって!」
「・・・なんだと?」
「ペンギン達が向かったけど、この嵐だからきっと苦戦しているよ!」
「すぐに行く」
油断していた、とローは舌打ちをした。
いくら実力に差がある相手だろうと、船は今、無防備に近い状態だ。
ただでさえマリンフォードで大将・黄猿に姿を見られているだけに、自分がシャボンディ諸島にいることは海軍に知られたくない。
揉め事は極力避けたかった。
「ちょっと待って! 船はどこに置いてきたの?」
べポと一緒に出ていこうとしたローをクレイオが呼び止める。
「・・・28番GRだ」
「それなら、近道を知っている・・・! 一刻を争うなら、私が案内する」
「・・・・・・・・・・・・」
一瞬、ローは迷った。
海賊同士の争い事にクレイオを巻き込みたくはない。
何より・・・
“縁”を切るなら、この場で断ち切ってしまった方がいい。
「キャプテン、どうしたの?! 早く!!」
「ロー、私を信じて!!」
「・・・・・・・・・・・・」
しかし、迷っている暇は無かった。
もし船を沈没させられたら、目的を果たすどころの話ではなくなってしまう。
「本当に近道なんだな?」
「表の道を行くよりは、倍近く早く着くはず」
「分かった、案内しろ」
ローは帽子を目深に被ると、クレイオとは目を合わせないようにしながらドアを親指で指した。