第6章 真珠を量る女(ロー)
重い沈黙が、ローとクレイオの間に流れる。
様々な悪事を働いて巨万の富を築いているドフラミンゴにとって、月に一度、クレイオから送られてくる両替商の利益など、はした金にすぎないだろう。
それをドフラミンゴの暴走の加担と呼ぶのは、あまりに強引だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
だがローは今、“別のところ”で葛藤していた。
クレイオを殺すだけの理由が見当たらない。
かといって、これまでのように彼女に触れることもできない。
こうやって向き合っているだけで、この手は彼女に触れたいとこんなに震えているというのに・・・
自分と対極にいると知った時、あれほど動揺したのは何故か。
ローは冷淡な性格だ。
“敵”と見なせば、たとえ女だろうと容赦はしない。
殺せと言われ、生かす理由が見当たらなければ、望み通りに刀を振り下ろす。
たまに気まぐれで生かしておくこともあるが、ドフラミンゴに関係する人間なら躊躇なく殺すだろう。
「クレイオ・・・」
こんな風に誰かを想ったことはない。
お前のことがこんなに許せねェのに、殺すこともできねェとは───
「おれは・・・お前を・・・・・・」
苦しさに顔を歪めるローの手が、『鬼哭』を掴んだ。
クレイオは覚悟を決め、静かに瞳を閉じる。
交差することのない二人の想いが弾けようとした、その瞬間。
「キャプテン!!!」
突然、作業場のドアが勢いよく開き、ずぶ濡れになったべポが飛び込んできた。