第6章 真珠を量る女(ロー)
ローはクレイオの話に、嫌でもドンキホーテファミリーの一員だった頃を思い出さずにはいられなかった。
ドフラミンゴはローを“右腕”として育てるため、体術や剣術、銃の扱い方を身に付けさせた。
それだけじゃない。
医学の知識も伸ばしてやろうと、大量の本を買い与えた。
もともと勤勉だったローは、同年代のベビー5やバッファローと違い、毎晩夜遅くまで机に向かって医学の勉強をしていた。
そうすることで、自分の短い寿命について考えずに済むことができたからだ。
そして、ドフラミンゴはそんなローの部屋にやってきては、熱心に本を読む少年を見て満足そうに笑っていた。
“おいおい、あまり無理をするな。身体を壊してもしらねェぞ”
“うるせェ、どうせ死ぬ身だ・・・無理をしてもしなくても関係ねェ”
“・・・ここにある本は全部読んじまったのか?”
“ああ・・・こんな簡単な本、1時間あれば読める”
“フッフッフッ・・・そうか、じゃあ明日はもっと専門的な本を買ってきてやろう”
ドフラミンゴの言う“買ってくる”とは正確には“強奪”のことなのだが、ローはファミリーにいた頃、何一つ不自由ない生活をさせてもらっていた。
いや・・・一つあるとすれば、それは未来への希望。
だがあの頃のローはそれで満足だった。
コラソンがそのたった一つ欠けていた、“未来”を与えてくれるまでは。
「ドフラミンゴは・・・自分の利益に繋がるからお前を守っているだけだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「白ひげが死んで時代は変わった。七武海の名がどこまで通用するか、もう分からねェぞ」
事実、先ほどの海賊はドフラミンゴの名前を恐れなかった。
ローが来ていなかったらクレイオはとっくに殺されていただろう。