第6章 真珠を量る女(ロー)
『人魚の涙』とは、世界で一番美しい真珠のこと。
「父がシャボンディ諸島で最初に刺青を施した、あの奴隷がお礼としてくれたものよ」
“おいおい、現存しないとすら言われている幻の真珠だぞ・・・? そりゃ本当だろうな?”
“さ、作業場の金庫にあります・・・!! でも、このままでは燃えてしまう!!”
“そいつはよくねェ”
「そこからは一瞬だった。10人はいた海兵の首が刎ねられ、辺りが血の海になったのは・・・」
あれほど残忍な殺し方を見たことがなかった。
彼は右手の指をクイクイッと動かしただけ・・・たったそれだけで、人間の命をいとも簡単に奪っていた。
「若様は屋根まで火の手が上がっている作業場に入ると、火傷一つ負わずに金庫を持って戻ってきた。地獄の業火にも動じない、悪魔のような方だと思った・・・」
同時に、世界政府という絶対的権力にも屈しない、強い方だと───
「そして、真珠を受け取った若様は私にこう言った」
“それにしても、よくこの真珠の価値を知っていたな”
“お前はいい眼を持っている。どうだ、おれの下で働かねェか?”
「若様はその代わり、父のために新しい作業場を建ててくれた」
“天竜人の紋章を塗りつぶす稼業とは面白ェ!! ぜひとも続けてもらいたいもんだ”
「天竜人と何の因縁があるのかは知らないけれど、若様はとても楽しそうだった。そして、私には鑑定士としての勉強をさせてくれた」
“シャボンディ諸島は新世界への入り口だ。前半の海の宝が多く集まる”
“お前はここで両替商として働け。そして月に一度、利益のいくらかをおれに納めてくれりゃいい”
「若様は私達に必要なもの全てを用意してくれた。新しい人生も・・・!!」
そしてある夜、ドフラミンゴはクレイオの頭を優しく撫でながらこう呟いた。
“お前を守ってやろう。政府も海賊も、お前の意に反する者は指一本触れられねェようにな”
「若様のおかげで私達は“危険因子”ではなくなった・・・そして、私は父から6代目ホリヨシを継ぐことができた・・・!!」
たとえ海賊だろうと・・・悪魔だろうと・・・
クレイオにとってドフラミンゴは、それほどの存在だった。