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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第6章 真珠を量る女(ロー)




「おれの恩人は・・・ドフラミンゴの暴走を止めようとしていた。とても・・・とても優しい人だった」

あの人は兄に銃を向けていたが、引鉄を引くつもりはなかったのかもしれない。
そんなあの人の優しさを、ドフラミンゴは踏みにじった。

だから、自分が代わって引鉄を引かなければいけない。


「だからもし、お前もドフラミンゴの“暴走”に加担しているのなら、お前をここで殺す」


刀は手元から数十センチ離れた場所に置いてある。
しかし、ローならそれを使わずとも簡単にクレイオを殺すことができるだろう。


「・・・貴方の恩人を殺したと知っても、若様が私の恩人であることに変わりはない・・・」


クレイオは腹を括り、ローと向き合うように正座をした。
窓に打ち付ける雨の音がやけに大きく部屋に響く。


「もしかしたら私のしていることは、貴方が言うように若様の暴走の加担となっているかもしれない」


ドフラミンゴを若様と呼んではいるが、クレイオはファミリーの一員ではない。
彼への恩義に報いる証として、そう呼んでいるだけのこと。


「ねぇ、ロー・・・前に話したことを覚えている? 父が初めて私の前でホリヨシの技術を見せた日のこと」

「・・・ああ」


クレイオがまだ幼かったある日、父はシャボンディ諸島で出会った一人の奴隷の烙印を消した。
それはフィッシャー・タイガーがマリージョアで暴れる2年も前のこと。


「その時、その奴隷からお礼にと真珠を貰った」
「ああ、そう言っていたな。世界で一番美しい真珠だと」
「そう・・・15歳の時から両替商をやっているけれど、あれほど美しい真珠に出会ったのはあの時が最初で最後よ」

クレイオは静かに深呼吸をすると、ローの瞳を真っ直ぐと見つめた。


「その真珠こそが数年後、私と父を助けてくれた。そして、救いの手を差し伸べてくれたのが、他でもない・・・若様だった」


その瞬間、ローはクレイオの背後に黒い陰が広がっていくような錯覚に陥る。



────フッフッフッフッ・・・!!



聞こえてくるはずもない“破戒の申し子”の高笑いに、ローの背筋には戦慄が走っていた。







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