第6章 真珠を量る女(ロー)
「・・・二人だけで話をしたい」
沈黙を破ったのは、ローだった。
眉間にシワを寄せながらこちらを見つめている海賊に、クレイオは金縛りにあったように身体を強張らせ、やっとの思いでコクリと頷いた。
「じ・・・じゃあ、作業場でいい・・・?」
「ああ。お前らはここで待ってろ」
ドフラミンゴが経営する店にべポ達を残していくのは心配だったが、先ほどの海賊が彼を貶す発言をしても何も起こらなかったから、おそらく大丈夫だろう。
ローはクレイオと一緒に外へ出ると、雨が激しく打ち付ける中、作業場に向かった。
最後に来た時と何も変わらない、小さな彫り場。
ここで背中の刺青を彫ったのは、もう2カ月も前になるのか。
畳の匂いと、墨の匂いが立ち込める部屋に足を踏み入れた途端、どこか懐かしさを覚え、ローの瞳が揺れる。
クレイオが部屋の灯りを突けると、5代目ホリヨシの肌絵が一番に目に入ってきた。
「・・・やはり、見事だ」
それは嘘偽りのない感想だった。
だがクレイオはその感嘆の言葉をどう受け取っていいのか分からず、ただ目を伏せるだけで何も言わない。
「お前の親父は、感染病で死んだそうだな」
「・・・どうしてそれを・・・?」
「ペンギンが酒場で聞いたそうだ」
「・・・・・・・・・・・・」
無言は肯定の証だろう。
ローは“今は”殺意がないことを証明するため、畳の上にあぐらをかき、刀を横に置いた。
「感染病で死ぬ海賊に刺青を施し・・・自分も同じ病気にかかったんだろ?」
「そう・・・でも、死んだのは感染病じゃない。あの額に入っている皮膚は背中だから分からないけれど・・・」
父は、“切腹”したの。
衝撃的なクレイオの言葉に、ローの瞳が大きく広がった。