第6章 真珠を量る女(ロー)
こんな嵐だというのに、金を必要としている奴はいるらしい。
両替商の中では、数人の男が店主を取り囲んでいた。
「10万ベリーだと?! それでおれ達が納得すると思っているのか?」
「何度言われても査定を変えるつもりはない。不満なら他の両替商をあたって」
クレイオはゴミでも見るような目つきで、海賊達が持ってきた宝箱を見ている。
「女、イキがるのもいい加減にしろよ? ドフラミンゴのシンボルをちらつかせた所で、本人がここに居なきゃ何の意味もねェ」
「・・・・・・・・・・・・」
太い右腕に髑髏のタトゥーを彫っている海賊は、七武海のドフラミンゴが経営する店だと分かっていながら、クレイオに詰め寄っていた。
白ひげの死から1カ月半。
皮肉にも海賊によって保たれていた秩序は崩れ、四皇という絶対的な存在の下に隠れていた海賊達はその野心のままに、各地で島を荒らしていた。
「ドフラミンゴがなんだ、ただの政府の犬じゃねェか!! この海を支配するのはおれ達だ、金をよこせ!!!」
「───!!」
海賊はイスに座っているクレイオの細い首を掴むと、無理やり立たせて自分の方へ引きずり寄せた。
「お前など簡単に殺すことができる。1億ベリーだ、さもねェと首を切り落とすぞ」
クレイオの首筋に錆びた剣を押し付け、凄んだその時だった。
「ああ・・・本当に、“簡単”だな・・・」
青白い光が店内に広がり、冷たい声が響く。
次の瞬間、クレイオを掴んでいた海賊の首が、天井に届かんばかりに吹き飛んだ。
「ヒィッ!!」
悲鳴を上げたのは、首を刎ねられた本人だけじゃない。
彼の仲間達ですら何が起こったか分からず、腰を抜かしながら入り口の方を振り返った。
そこには、切り落としたばかりの生首をお手玉のように弄んでいる、“死の外科医”。
「テメェの言う通り・・・お前など簡単に殺すことができる」
「貴様は・・・トラファルガー・ロー!!」
ローは冷酷な笑みを浮かべながら、青ざめている海賊の首をチラリと見た。