第6章 真珠を量る女(ロー)
「キャプテン、レーダーになにか映った・・・! これは・・・巨大な根っこ?!」
「ヤルキマン・マングローブだな・・・べポ、浮上しろ」
「大丈夫かな、船の傾きを抑えられるか分からない」
「何とかしろ」
大きなうねりに巻き込まれたら一巻の終わりだ。
べポが操縦桿を上に向けると、ゴオッという轟音とともに船体が軋む嫌な音が響く。
突然、船内の電力が急激に落ち、全ての電子機器が点滅し始めた。
「電圧を上げろ! このままだと沈没するぞ!!」
「今、ペンギンが電圧室に行ってます!!」
なんてことだ。
あれだけ穏やかな海域の中にあったシャボンディ諸島が、まるで津波のど真ん中にいるようだ。
今あらためて、エドワード・ニューゲートという海賊の恐ろしさを思い知る。
「とんでもねェ野郎だ・・・四皇というのは・・・・・・」
危険を知らせるブザーが鳴り響く中、船員達は必死に浮上を試みている。
海の中でさえこの荒れ模様なのだ、海上は地獄だろう。
もしかしたら、全て流されているかもしれない。
───クレイオは・・・無事だろうか。
「・・・何を考えているんだ、おれは」
無意識のうちに彼女のことを思ってしまっていた自分に舌打ちをすると、ローはもう一度ビブルカードを見た。
間違いなく真上を指している。
「浮上するよ!!! みんなどこかにつかまって!!」
べポが叫ぶと、ポーラータング号が大きな唸り声を上げながら上昇し始めた。
直後に大きく傾き、さすがのローもよろめく。
「・・・!!」
倒れそうになったところで、ジャンバールが後ろから抱きかかえるように支えてきた。
「すまねェな、ジャンバール」
「人の上に立つボスが、そう簡単に倒れていいものではない」
たとえ嵐であろうと、ローが“シャボンディ諸島に戻る”と言ったら、クルー達は命令に従う。
かつて“キャプテン”と呼ばれていた屈強な男もまた、今はローの部下として忠義をつくしていた。