第6章 真珠を量る女(ロー)
「ペンギン・・・ありがとな」
礼の言葉を口にしたローだったが、相変わらず冷たい瞳をしていた。
今、彼は葛藤と戦っている。
ドフラミンゴの部下であることへの憎しみ、ホリヨシという類い稀なる彫り師であることへの尊敬。
クレイオに対する二つの相反する感情が渦巻いていた。
「キャプテン・・・?」
「余計な心配をかけて悪かった」
この葛藤を終わらせるためには、やはり戻るしかない。
───シャボンディ諸島へと。
白ひげが死んだことで、世界は間違いなく大きく動く。
ドフラミンゴはこれまで以上に、人々を混沌や破滅へ突き落そうとするだろう。
“ドンキホーテ海賊団船長ドフラミンゴ”
“お前がこの先生み出す惨劇を止める為・・・潜入していた”
コラさんの本懐を遂げるのは、自分だ。
政府の人間、“海兵”なんかに遂げさせねェ。
「麦わら屋が目を覚ましたら、すぐに出航するぞ」
そのためにはまず、ケジメを付けなければならない。
もしクレイオがいずれ、ドフラミンゴとともに惨劇を生み出すならば───
今は静かな海の向こうを見据え、ローの心には憎しみとは別の重い感情が生まれようとしていた。