第6章 真珠を量る女(ロー)
“ロー・・・一つ聞いていい?”
“過去に、なにか皮膚の病気にかかったことがある・・・?”
「これは、棺桶を見た島の人間が言っていたんですけれど・・・」
死んだ海賊の上半身には、猛々しいグランドラインの海の刺青が彫られていた。
まるで彼が渡った航海の軌跡のように。
「きっとクレイオさんの親父が・・・彫ったんでしょうね」
その時海賊の血液に触れ、病に感染した。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
医者として見れば、明らかに病気を持っている人間に刺青を施すなど、愚かな行為でしかない。
しかし、ローにはそう思えなかった。
“珀・・・鉛病・・・・・・”
“以前、本を読んだことがある。かかれば肌が真っ白になり、その病原体は子どもに遺伝してまう、恐ろしい伝染病でしょ”
そうと知っても、病人の肌に触れることを恐れない彫り師を、彼は知っている。
“もし感染ったら、それが私の寿命だったということ”
“私は客に刺青を彫る時、切腹をする覚悟”
「それが・・・ホリヨシの信念だからだというのか・・・?」
“もし感染しても、貴方が望む刺青を彫り終えるだけの時間をくれたら、私はそこで死んでもいい”
それはまさに、父親の生き様であり、死に様だったのだろう。
“伝染病”を持っているかもしれないローを、クレイオは抱きしめ、刺青を彫ることをやめようとしなかった。
因縁
悪縁
奇縁
宿縁
どのような“縁”だろうと、ローとクレイオは出会った。
ローだったからこそ、“麦わらのルフィ”の命を救えたように・・・
クレイオだからこそ、ローの運命の何かを変えることができるのかもしれない。