第6章 真珠を量る女(ロー)
海岸に並んで座るローとペンギンの目の前には、180度広がる青い海。
静かで、波のない“凪”だ。
ペンギンは、食の細いローがキチンと食べているのを確認してから口を開いた。
「彼女の死んだ父親について、キャプテンは何か聞いていますか?」
「あいつの親父・・・? “聖地マリージョア襲撃事件”で解放された奴隷達の烙印を消した、クレイオの師匠としか聞いていない」
「じゃあ、なんで死んだかまでは聞いていないんですね?」
「そういや・・・そうだな・・・」
父親の皮膚なら、今もクレイオの作業場に飾られている。
しかし、なんで“あんな姿”になったのかは聞いていない。
ペンギンは言いずらそうにしながら続けた。
「これは、両替商の近くの酒場で聞いたんですけど・・・感染病だったらしいです」
「感染病・・・?」
その瞬間、ローの心臓がドクンと音を立てた。
「数年前、ある海賊がシャボンディ諸島に現れたそうです。そいつはゴールド・ロジャーの時代を知っている、かなり名のある海賊だったとか」
だが、その海賊は死の病を患っていた。
それは血液を介して感染する病気で、手の施しようがないところまできていた。
誰の目にも死期が近づいていた海賊が、シャボンディ諸島に来た理由。
“ホリヨシという彫り師を探している”
海賊は酒場という酒場を廻り、ホリヨシを探していた。
「もちろん、ホリヨシなんて男を知る者はいなかった。すると海賊はこう言ったそうです」
“冥途の土産に、死に化粧を・・・生きた証として”
「それから海賊の姿はパタリと見かけなくなった。数週間後、棺桶を船に運ぶ彼の仲間達の姿が目撃された」
それから三カ月と経たなかった。
クレイオの父親が“何故か”、海賊と同じ病にかかって死んだのは。