第6章 真珠を量る女(ロー)
「キャプテン」
深い考え事をしていたローが、ふと背後から聞こえてきたペンギンの声に意識を戻される。
振り返ると、九蛇からもらったスープと肉を持っていた。
「キャプテンの分です。今朝から何も食っていないでしょう?」
「・・・ああ、悪いな」
嫌いな野菜をよけながらズズーッとスープを飲む船長に、ペンギンはクスリと笑った。
「・・・麦わら、なかなか目を覚ましませんね」
「覚まさねェ方がむしろいい・・・動いて傷口が開いたら死ぬからな」
ルフィの生命力は異常だ。
しかし、次に傷口が開いて出血したら、ローすらどうすることもできなくなる。
「すいません」
突然、ペンギンがポツリと謝ってきた。
「なんだ、いきなり」
「おれ・・・実は・・・・・・」
“PENGUIN”と書かれた帽子で顔を隠しながら、ペンギンは小さな声で続ける。
「キャプテンに黙って、クレイオさんについて調べてたんです」
「・・・クレイオを・・・・・・?」
「タトゥーを彫るためとはいえ、キャプテンに刃物を刺すわけだから・・・信用できる奴かどうか確かめておきたくて・・・」
こんなことをすれば、ローが嫌がることは分かっていた。
でも、リーダーに何かあってからでは遅い。
そう思って、人知れずクレイオの身辺を探っていた。
「それなのに、ドフラミンゴと繋がっていることは分からなかった・・・」
「・・・それがどうした」
「その・・・ただ・・・・・・」
“どうやら・・・おれとお前は本当に、対極にいたようだな”
そう言った時のローは、とてもつらそうな顔をしていた。
もっと早く真実を知っていれば、あんな表情をさせなくてすんだだろう。
ペンギンが言葉に詰まっていると、ローは水牛の肉を小さくかじりながらポツリと呟いた。
「それで・・・お前は、クレイオについて何か分かったのか?」
ドフラミンゴが経営する両替商で働き、6代目ホリヨシという肩書を持つ彫り師であるということ以外に。