第6章 真珠を量る女(ロー)
「分からねェな・・・そもそも、なぜお前は両替商なんてやっている?」
「・・・・・・・・・・・・」
「ドフラミンゴには彫り師だということを話していねェのか?」
「若様は私がホリヨシだということを知っているし、それを守るための“隠れミノ”として両替商を用意してくれた」
“お前はいい眼を持っている。どうだ、おれの下で働かねェか?”
「あの方がいなければ、とっくにホリヨシの血は途絶えていた」
“お前を守ってやろう。政府も海賊も、お前の意に反する者は指一本触れられねェようにな”
「貴方との間に何があったか知らないけれど・・・私にとって若様は恩人なの」
「お前はあの野郎にダマされている。何を企んでいるか知らねェが、必要なくなればお前もゴミのように捨てられる。ヒューマンショップのディスコのようにな!」
「だとしても!」
声を張り上げたクレイオに驚き、べポが小さく“ヒッ”と悲鳴を上げた。
「若様が私の恩人であることに変わりはない・・・!」
もし、彼に出会っていなかったら、自分と父親は政府によって殺されていた。
彼がその権力で守っていてくれたから、先代ホリヨシから技術を学ぶことができた。
「・・・・・・・・・・・・」
ローは黙ってクレイオを見つめていた。
その表情からは、怒っているのか、怪しんでいるのか、恨んでいるのか、悲しんでいるのか、まったく分からない。
だが、感情のないその瞳の下には、青黒いクマが深く染まっていた。
「ドフラミンゴが“恩人”・・・・?」
掠れた声でポツリと漏らすと、トレーナーの胸元にデザインされている海賊マークを右手でギュッと掴んだ。
昨日彫ったばかりの背中のタトゥーもジンジンと痛む。
「どうやら・・・おれとお前は本当に、“対極”にいたようだな」
手の中にあるクレイオの心臓。
脈打つそれは温かく、同時に切なくもあった。