第6章 真珠を量る女(ロー)
「はい、キャプテン・キッドもいたそうです・・・申し訳ありません」
『なぜ、お前が謝る?』
「ローが島に来ていることを、若様にお知らせできませんでした」
すると、電伝虫がドフラミンゴの声で笑った。
それは十数年前にローがファミリーの一員だった頃とまったく変わらない、不敵な笑い声。
『なァに、気にすることはねェ。島は広いんだ・・・千里眼でも持ってねェ限り、隅々まで調べるのは無理ってモンだろう』
「・・・・・・・・・・・・」
『それより、海兵が店に何の用だ?』
「実は───」
クレイオはチラリとローを見た。
まだ・・・彼を救えるかもしれない。
「ローは“すでに島から逃げ出した”そうですが、キッドがまだ潜伏しているとのことで・・・匿っていないかと調べられていたんです」
大丈夫、声はうわずっていない。
平静を装ったから、気づかれることはないはずだ。
『・・・・・・・・・』
数秒の沈黙が恐ろしく怖かった。
疑われているのだろうか・・・
ローも観念したような目を電伝虫に向けている。
『ローは頭のいいガキだからな。それより、お前は大丈夫だったんだろうな?』
「は、はい・・・大丈夫です。若様のお名前を出したら、海兵達は帰っていきました」
『ならいいが・・・何かあったらすぐに言え。ディスコは捨てたが、お前は大事な部下だ』
「ありがとうございます・・・」
ドフラミンゴの用件は、本当にクレイオの無事を確認するだけだったようだ。
ガチャンと切れたのを見て、ハートの海賊団は皆、フーッとため息を吐く。
ローも刀を鞘に納めると、クレイオを静かに見つめた。
「あの野郎にウソをついたことがバレたら、命はねェぞ?」
「・・・本当のことを言っても、命はないでしょ」
ドラフミンゴに殺されるか、ローに殺されるか。
どうせ死ぬなら・・・
より“守りたい”と思う人を守って死ぬ方がいい。