第6章 真珠を量る女(ロー)
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・
最悪のタイミングに、店の中が凍り付く。
ローはクレイオと向き合ったまま、目だけをそちらに向けた。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・
「───その電伝虫は、若様との直通よ」
死を覚悟でクレイオは言った。
今ここで心臓を潰されるか、それともドフラミンゴに殺されるか。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・
電伝虫は鳴り続けている。
まるで、相手はそこにクレイオがいることを分かっているかのようだ。
「・・・出ろ」
ローはクレイオの腕を引っ張り、電伝虫の前に立たせた。
「ここで死にたくねェなら、話すべき内容は分かっているな?」
「・・・・・・・・・・・・」
その冷たい目は、憎しみという言葉だけでは言い表せない、地の底で渦巻く感情を宿していた。
今の彼なら、クレイオを殺すことに躊躇はないだろう。
仲間達はそんな船長を固唾を飲みながら見つめている。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・
クレイオは目を閉じ、受話器に手を伸ばした。
プルプルプル・・・ガチャッ
「───お待たせしました、若様」
『どうした、何故さっさと出ない?』
記憶のままのドフラミンゴの声に、ローは背筋に氷を当てられたように身震いをした。
あれから11年も経っているというのに、かつてのボスの脅威はまだ彼を支配しているというのか。
「すみません、海兵の相手をしていました」
『海兵・・・?』
電伝虫の二つ飛び出た目は、ジーッとクレイオを見つめている。
映像電伝虫ではないから、物音さえ立てなければ店にロー達がいることは気づかれないはず。
『先ほどディスコから連絡があった・・・“麦わら”が人間オークションで天竜人を殴ったそうだな』
「はい・・・そのおかげで島は今、大騒ぎです」
『ローもその場にいたそうじゃねェか』
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ここはイエスと答えるほかにない。
クレイオの心臓は、ローの手の中で早鐘を打っていた。